家路の車窓
2003/03月号
2003/03/10月曜日
「“沈まぬ太陽”の感想」
久しく読書感想文なるものを書いたことがなかったので,今回書いてみることにしました.皆さんの中にも読まれた方がいらっしゃると思います.山崎豊子著の「沈まぬ太陽」を取り上げました.この頃,この「家路の車窓」の筆がなかなか進まなかった原因の一つに,電車の中で「沈まぬ太陽」を読みふけってしまうことがありました.アフリカ篇,御巣鷹山篇,会長室篇の3部作全5巻という長編小説です.今年の1月ぐらいから読み始めたので,2ヶ月強で読んでしまったのですね.1冊読み終わると,次の巻を読みたくて,本屋に走っていました.1月の終わり頃,風邪をひいてしまい少し寝込んだのですが,枕元にこの本を置いといて,熱があっても読みたいという気持ちにさせられた小説でした.小説の内容は,とても書ききれませんし,実際の出来事をベースに小説として再構築されたものですから,僕がここでいろいろ書いてしまうと,誤解を招くこともありますのであえて書きません.簡潔に言うと,皆さんも良くご存知の日航機御巣鷹山墜落事故を軸に,なぜこのような悲劇が起きてしまったか,また,その後は・・・を,ある一人の人物を全編の主人公に,もう一人の主人公を会長室篇に登場させ,「組織の論理」と誰もが持っていると信じる個人の「正義感」との戦いを描いている小説です.かえって分かりにくくしてしまったかな?とにかく一読してみてください.
突然話が変わるようですが,人間は集団になるとモラルが低下する動物なのでしょうか?暴走族も,一人一人になると結構心優しい子供たちだったりしますが(顔は怖いですが),集団で暴走するときは人が変わったりしているように思います.悪いことをしていると認識しているようですし.
「沈まぬ太陽」の舞台となるナショナル・フラッグ・キャリアの航空会社も大きな組織・集団です.この集団のモラル低下に対して,全編を通じた主人公が正義感を持って戦うが,モラル低下を止めることはできず,御巣鷹山墜落事故が起きてしまいます.その後,この組織・集団のモラルを正すべく,もう一人の主人公が颯爽と登場し,先の主人公と2人で正義感を武器に戦います.しかし,航空会社よりももっと大きい組織・集団,すなわち政界・官僚が姿を現してきます.皆さんも日頃感じていると思いますが,この集団のモラル低下はひどいものです.しかし,2人の主人公は戦いを挑みますが,この大きすぎる集団に飲み込まれるように,敗北する形となります.しかし,個々の心の中には,良心・正義感が「沈まぬ太陽」のように赤々と燃えているのです.
僕が中学3年生ぐらいの頃,ロッキード汚職事件をはじめとする疑獄事件が頻繁にテレビで取り上げられていました.子供心に「許せない」という気持ちがあり,両親や家庭教師の先生に「許せない」ことを伝えた記憶があります.そのときの相手の反応も覚えています.「世の中,そんなものだよ」というような反応でした.両親は,「こんなことを考えて,学生運動に走らなければ良いのだが」とも思ったようです.その後,実社会での経験を通じて,両親や家庭教師の発言の意図もなんとなく分かるようになりました.
しかし,僕は元来,組織・集団への帰属意識というものが低いようです.かっこよく言えば一匹狼なのかもしれません.先輩とか後輩とかほとんど意識しません.そして,子供の頃に持っていた「許せない」という気持ちが今でも,胃に穴を開けてしまうのではないかと思うぐらい熱くなるときがあります.そのときには,組織帰属意識が低いものですから,どうなってもかまわないと思い,口から出てしまいます.こんな僕の人生には何が待ち受けているのでしょうか?結構楽しみです.
2003/03/10月曜日
「ゴールキーパー」
長男は,幼稚園でサッカークラブに入っています.毎週火曜日が練習日で,それを楽しみにしていて「あと何回寝ると,サッカーだ」と言って指折り数えているようでした.「今度試合があるから活躍してくるね」とか「僕はスライディングが得意なんだ」とか,よくサッカーを話題にしていました.妻が「ベッカム,ベッカム」と騒ぐのもあり(我が家には,ベッカムの顔が刷り込まれたペプシコーラの缶が2缶保管されています),ベッカムに憧れているようです.まだ,赤ちゃん言葉が抜けない2歳の長女も「ベッカムゥ〜」というぐらい,今さらながらベッカム旋風が我が家をにぎわしています.
ところが,ここのところ,「サッカー」のお話が出てきませんでした.どうしたのかなと思っていると妻が「ここ3回ぐらいサッカーをやっていないらしい」というのです.そこで,一緒にお風呂に入りながら「最近,サッカーはどうだい」と話題にしてみたのです.「やってない」とか「おもしろくない」とか言うだけでなかなか話さなかったのですが,少しすると「僕,先生からゴールキーパーが上手だって言われるんだよねぇ」と言ったのです.確かにサッカーを始めた頃から,よくゴールキーパーをしていることを聞いていました.
ベッカムのように,ボールを蹴って走ってシュートをしたい,そうなのです.そりゃそうかもしれませんね.自分が子供の頃も同じ気持ちでしたからね.ゴールキーパーは足が遅くてもできるという感じがしてましたから,あまりかっこ良くないポジションのように思っていました.ここで親としては何といって励まそうかと考えましたが,簡単でした.今やサッカーは非常に奥深いスポーツであることが知られ,実はゴールキーパーは非常に重要なポジションであることも認識されてきています.また,このポジションのスーパースターも出ていますね.ドイツ代表のオリバー・カーンも今やテレビCMに登場してくれています.長男もオリバー・カーンの名は知っていましたので,「ゴールキーパーか,かっこいいなぁ」と話し励ましてやりました.お風呂から出ると,レアル・マドリードの試合がテレビで放映されていて,長男は「ゴールキーパーってキャプテンなの?」とか話してくるようになりました.彼がゴールキーパーというポジションに憧れを持つまでには,もっと時間がかかるかもしれませんが,ベッカムのポジションだけでサッカーはできるのではないということを分かってほしいと思います.それから妻には,ベッカムだけでサッカーが成り立つのではないということを分かってほしいと思います.