家路の車窓
2003/06月号
2003/06/03火曜日
「ほめられること」
ここのところ,子供ネタが多かったので,自分のことについて書きます.実は,この度,学会から名誉ある論文賞をいただきました.本当に嬉しかったですね.数年前にも,別の学会ですが,同じく名誉ある論文賞をいただきました.褒められるというのは,何歳になっても嬉しいことです.
話は飛びますが,先日,授賞式にカミさんを連れて出席した後,共同研究者の方とお茶を飲みました.実は,この共同研究者の方には,この「家路の車窓」を読んでいただいており,「最近,子供ネタが多いねぇ.」と感想を述べられたので,このタイトルで自分のことについて書くことにしました.
さて,話を元に戻します.受賞させていただいた後の感想は,「もう一度欲しい(ほめられたい)」という気持ちです.数年前の論文賞をいただいた後も,同じ気持ちでした.欲が深いのかな?でも,俄然やる気がでますね,確かに.褒められて嬉しくない人はいないでしょう.
この経験を教官として教育に生かしたいと思います.教官と学生は,ある種の信頼関係の中で成り立っていると思います.厳しくするだけでは,学生もやる気を失うと思います.本当に褒めるべき点があれば,高く評価するべきであると思います.褒められた経験は自分の自信にもなりますし.
自分の子供がいたずらしたりするとガミガミ怒ってしまいがちなのですが,何か成長を感じさせるような出来事があったら,子供の視線に立って「よく,やった〜!すごいぞ!世界で一番だぞ!!」と褒めてあげたいと思います.あれっ!?結局,子供ネタになってしまいました.
2003/06/03火曜日
「フロントエンドとバックエンド」
「料理を作るのは好きなんだけど,後片付けがねぇ」とか,「部屋の模様替えは楽しいけど,その後のゴミ出しが大変」という人が多いと思います.このコラムのタイトルは,原子力工学(今は量子エネルギー工学と言う人が多いのでしょうか?)の技術用語として用いられているものから引用しましたが,つまるところ,「料理を作る」や「部屋の模様替えをする」がフロントエンドであり,「後片付け」や「ゴミ出し」がバックエンドとなります.原子力工学の分野では,原子・量子の力でエネルギーを産み出すことがフロントエンド,その後片付け,すなわち放射性廃棄物の処分がバックエンドということになります.
冒頭の2つの文例にあるように,一般的に人間はフロントエンド側の行為が好きです.僕も実際そうです.バックエンド側の行為は面倒くさいし,何か注目もされませんよね.料理を作って食べてもらうと「おいしい」という反応がかえってきます.部屋の模様替えをすると「きれいになったね」と誉めてもらえます.しかし,後片付けやゴミ出しは,あまり見てもらえません.
ところで,最近の新聞などで「環境修復」とか「環境保全」というキーワードを目にすることがあります.僕自身,この分野で研究・教育を進めていますが,この「環境修復・保全」こそ,バックエンド側の行為です.「高度成長」というフロントエンド行為を突き進んできた後に残った環境問題を今,後始末し,廃棄物処理をどうするかで悩んでいるわけですね.
上記のようにマスメディアでも取り上げている効果もあり,最近の学生さんも「環境」について研究・勉強したいという人がいます.その人たちには,上記のことを是非とも認識しておいていただきたいと思います.すなわち,人はみなフロントエンドに目がいきがちであるということを.ですから,研究の創生期の頃は,案外「なんだ?あの研究は.」とか「あいつは変なことをやっているなぁ」とか,人格まで否定されるようなときもあると思います.正直言って「つらい」と思うことが多々あります.であるからこそ,「このような問題に取り組まなければならない」とか,「私がやらないで誰がやるのか」といった使命感を持って臨んでほしいと思います.決してかっこいいものではありません.しかし,「やりがい」を持てることは確かです.