家路の車窓
2003/09月号
2003/09/01月曜日
「相撲部屋一日入門」
僕の住んでいる町には,なんと相撲部屋があります.両国からかなり離れた位置にある町ですが,大相撲協会の相撲部屋があります.バブルで土地の値段が高騰したときに,都内では相撲部屋を開けなかったのかもしれません.まだ,十両とかの関取のいない部屋ですが,僕は応援しています.この夏休み,小学生を対象に一日入門がありました.さっそく,長男が入門しました.大きな力士衆に囲まれても臆することなく,裸ん坊になって白いまわしをつけてもらってました.
親方が出てきて,いよいよ練習開始です.相撲にも型があること,非常に礼儀を重んじること,を僕自身,知りました.やはり日本の武士道に通じるスポーツなんですね.本物の相撲部屋の土俵の上で,すり足をし,受身を練習し,最後には友達や力士と相撲が取れたのは,息子にとって,とてもよい体験になったのではないでしょうか.
2時間ほどの練習や取り組みが終了すると,いつも力士が入るお風呂で汗を流し,力士たちが食事をするお膳の上でスイカを食べさせてもらいました.このときも力士衆が子供たちを取り囲んでスイカを食べるのを見守ります.ふざけて食べたりすると「ダメだ」と活が入るし,スイカの種をお膳から落とすと,自分で取るように指導されたり.当たり前ではありますが,子供であっても同等に扱うという姿勢は,やはり武士道を感じます.「子供だからしょうがない」というのは良くありません.親として,教育に従事する人間として,非常に基本的なことではありますが,再認識をさせていただいた相撲部屋体験でした.
2003/09/01月曜日
「休み明け」
いきなりですが,僕は休暇をしっかりと取ります.土日に仕事をしないことは勿論,仕事のことは考えないようにしています.仕事のことをまったく忘れます・・・と言いたいところですが,研究を職業としている人なら分かると思いますが,どこか頭の片隅に,今現在取り組んでいることや興味のある現象について意識しているところがあります.であるから,頭を洗ってシャワーでシャンプーを流しているときや,子供の寝顔を見ながらウトウトして,今まさに眠りに落ちようとしたその瞬間に,新しいアイデアや考えが浮かんだりします.
皆さんも同じだと思いますが,休暇明けは何となくペースがつかめません.しかし,僕の場合,休み明けは,ペースはつかめないものの,俄然やる気になっています.「よ〜し,論文を書くぞー!」とか.何か,一種の飢えを感じます.論文を書きたくて,うずうずしているという感じです.でも,ごくたまにですが,土日のどちらかを仕事に当てたりすると,その翌週一週間のペースが落ちてしまうと感じます.ある程度,やる気を飢えさせて,一気にやるという方が効率的ではないでしょうか.
昨年,高校に出前で授業をしました.そのとき,他の大学の先生方も一緒だったのですが,出前授業の後の高校の先生との懇談で,「私たち,大学工学部の先生は,24時間営業ですから」と自慢気にいっている人がいました.他大学の先生ですから,文句を言う筋合いではないので,口には出しませんでしたが,「だから,ダメになっちゃうんですよ,大学生が.」と心の中で発言しました.
大学には,確かにこのような時間的な乱れがあります.だから生産性が落ちているのだと思います.「やるときは集中してしっかりやる.休みはしっかり取り,思いっきり楽しむ!」が僕のモットーです.だって,皆さん良く考えてみてください.24時間営業して,クリエイティブな思考ができると思いますか.努力賞を目指しているのでしょうか.研究は結果が勝負です.如何に一生懸命やっても,何かクリエイティブな成果が得られなければ,社会的には時間の無駄にしかならないと思います.
僕たちの研究室では月に2回程度,ドクターコースから4年生まで全員(25名程度になりますか)集まって,1ヶ月間の経過報告会を行います.4年生の中には,準備の要領がつかめなく,徹夜で臨む人もいます.しかし,僕は「徹夜をするな」と指導します.経過報告会では,ただ経過を報告するだけではなく,今後進むべき方向や実験精度に関する議論など,非常にクリエイティブな思考をしなければなりません.徹夜で臨んでは,この最も大切なクリエイティブな思考が止まってしまいます.それでは,時間の無駄になってしまいます.
日本には,“時間をたくさん使うこと”=“一生懸命やること”という等式があるように思います.アホらしいですね.日本社会に“効率的に時間を使うこと”=“クリエイティブな生活”という等式が定着するよう頑張りたいと思います.