家路の車窓
2004/04月号
2004/04/01木曜日
「練習試合の必要性」
みなさん,中学・高校・大学でクラブ活動を経験した人は多いと思います.クラブに入部して,最初の一年は,玉ひろいだったり,ロードレースだったり,素振り,壁打ち,ボール磨き・・・特に運動部では,基礎体力づくりと称する下積みのような期間で,ここで嫌気がさして退部という人もでてきます.文化部もおそらく同じような下積み的な期間が入部早々にあるのではないでしょうか.陶芸部では,土揉みばかりなのではないでしょうか.これはクラブ活動に限りません.例えば料理人の世界などテレビのドキュメンタリー番組で取り上げられ,最初は食器洗いで,3年間ぐらい包丁も持たせてもらえない期間があるようですね.
でも,普通だったらここでリタイヤしてしまうものを乗り越えている人が,レギュラーを獲得したり,芸術家になったり,腕の良いコックさんになれるという成功を獲得しているのでしょう.でも,どうして成功した人は,その下積みの生活を乗り越えられたのか,自分自身の経験を振り返って考えてみました.
それは,先輩が対抗戦や練習試合で活躍する姿を観たり,応援したり,ということをしていたからではないでしょうか.そのときには,来年には,あのグランドの真ん中で活躍している自分を先輩の姿に映してみているのではないでしょうか.そして,帰ってから「よ〜し」とか言って,以前とはまったく違った気持ちで玉ひろいやロードレースをしたのではないでしょうか.陶芸家やコックさんの場合は,すぐそばに活躍している先生や先輩がいますから,いつもそんな気持ちを持つことができ,つらい修行も何とか乗り越えられるということなのではないでしょうか.
突然ですがここで,大学教育について考えてみます.大学の教育カリキュラムは大まかに分類すると,1年は一般的な教養,2年は専門基礎科目,3年は専門応用的科目,4年生は卒業研究という区分けができます.経験のある人もいると思いますが,「1年の一般教養は,何のためなのだろうか.」とか2年の専門基礎科目も,「これが実際に役に立つのだろうか.」と思ったりします.僕自身そうでした.が,40歳にもなって,1, 2年のとき,しっかり基礎を学んでおけばよかった,と思ったりするんですよね.どうですか,同年代の方々.
先のクラブ活動では,先輩がその基礎をベースに試合などで活躍する姿を観て,基礎練習に励み乗り越えるというチャンスが対校試合や練習試合にあります.しかし,大学教育において,この練習試合に相当するものが少ないんですよね.4年生の卒業研究成果発表会などを大いに活用して,なんとか基礎学問を乗り越える施策が必要なのではないかと考えているところです.
2004/04/01木曜日
「最近の技術開発傾向に関して」
大学でも,ベンチャービジネス云々のお話が多くなっています.僕自身,民間組織の出身であり,また,「将来,社長になりたい」という夢も持っているので,ビジネスには関心があります.しかし最近のビジネスに関する技術開発の傾向に少し疑問を感じています.今の技術開発は,現時点で儲かるか否かという視点で評価されているように思います.特許のアイデアも,少なからず,このような視点から評価される場合もあるのではないでしょうか.
以前,洗濯機の中にネット網に風船をくっつけたようなものが売り出されました.主婦のアイデアで,洗濯中に出る塵・ゴミをネット網で取るというもので結構売れたと記憶しています.これそのものは,すばらしく面白いアイデアであります.
しかし,工学を専門とする技術者に求められているのは,このようなアイデア・技術でしょうか.今の社会・経済情勢から,このようなアイデアを技術者が求められていることが多くなっているのではないでしょうか.悪く言えば,軽薄な技術開発を,うまく宣伝して儲けることばかりに目を向けるような状況が作られつつあるように思います.これは非常に危険です.バブルのときも,本業である技術開発をおろそかにし,目先の利益にとらわれてしまいました.今の日本の状況は,これに端を発したといっても過言ではありませんよね.将来性・継続性・発展性を鑑みて必要な技術開発を見失わないようにしなければならないと,僕自身は心しています.