家路の車窓

2004/05月号

2004/05/10月曜日

 

「マークシート」

何を隠そう,僕は共通一次試験施行2年目の世代です.予備校で,如何に早くきれいに塗りつぶすか,なんていう練習もあったように記憶しています.今から考えると,「アホか!」と言いたくなりますが,その当時は真剣でした.ある意味で,これで人生が決まる,とまで考えていたように思います.受験勉強の最中に,トイレでしゃがみながら,ブツブツ独り言を言っていたことを記憶しています.もうほとんどノイローゼのような感じだったですね.

でも,こんないくつかの選択肢から適切な答えを選んで,確実にその答えを塗りつぶせるかどうかで,人生なんか決まりやしませんよね.確かに選別においては,必要なこともあるのかもしれませんが,選に漏れたからといって,悲観することはないのです.合格を勝ち得たからといって,その後の人生がハッピーかどうかなんて分かりはしないのです.

僕が思うことは,如何に自分を表現し,社会にアピールできるかの方が大切だと思います.そのためには,楕円形の穴を確実に選んで塗りつぶす技術よりも,人前で大きな口を開けて,原稿用紙など持たず,自分の気持ちを伝えられる技術や,論理学的な文章で自己表現し,多くの人々の賛同が得られるようなアイデアを持つことの方が大切です.マークシートなんかに負けてはいけませんよ.

 

2004/05/10月曜日

 

「イメージから論理へ」

「家路の車窓」200312月号で,「活字から映像に」というタイトルで,文章として書かれている事項を頭の中で,映像のようにして理解することの必要性についてお話しました.ところが,マークシート型のセンター試験の頃,高校生がどのような教科書・参考書を読んでいるのかをのぞき見ることができました.最近の高校の教科書・参考書は,色鮮やかに絵やカラー写真がふんだんに使われているんですね.まぁ,今の技術からすれば当然だと思いますが.

僕の時代には,図があっても線画であったり,写真も白黒のドットの集合体で描かれたもので見にくいことこの上ありませんでした.僕らの世代は,20年前に“新人類”とか“ながら族”とか呼ばれました.“ながら族”というのは,(ウォークマンで)音楽を聴きながら勉強したりするところから,名づけられました.この世代は,文章ばかり見て勉強したので,「ニワトリの絵を描け」という問題に,四本足のニワトリを書く世代と言われたものでした.きっと,今の10代後半から20代前半の人には,このような人はいないのでしょう.

これを知って思ったことは,今の高校生は,様々なことをイメージとして捉えている人が多く,これを文章化することのトレーニングが少ないのではないかと思いました.僕の世代は,先にも書きましたようにイメージに欠如したものが多く,それ故,理解するためには自分で活字をイメージ化するしかありませんでした.「イメージを持つこと」と「論理学的な文章の理解」の行き来は,すべての物事を理解する上で必要不可欠なことです.「イメージを持つこと」は右脳が活躍し,「論理学的な文章の理解」は左脳が主に活動するのではないでしょうか.すべての物事の理解には,このいずれも必要不可欠であるので,人間の脳にはそれぞれ右脳と左脳があるのではないでしょうか.

では,イメージとして物事を理解しているであろう今の高校生には,イメージを文章化することを教育として行うべきではないかと思います.具体的には,映画やTVドラマの感想文を書くような教育はいかがでしょう.

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