家路の車窓
2005/01月号
2005/01/04火曜日
「2005年のはじめの言葉は,努力!」
この「家路の車窓」を書き始めて,4回目の年末年始を迎えました.「光陰矢のごとし」とはよく言ったものだと思います.恒例ですが昨年一年を振り返り今年一年の身の振り方を考えてみたいと思います.昨年は史上最多の台風上陸とその大規模化によって水害が多発しました.その後には,新潟中越地震やそれに付随した土砂災害があり,テレビや新聞で数多く取り上げられました.年も押し迫った12月には季節外れの台風もどきの超低気圧が日本を通過して被害を残していきましたね.もうこれで終わりかなぁと思っていた矢先の年末も年末,14万5千人もの方々が命を落とされたスマトラ沖大津波が発生してしまいました.昨年は土木技術者である自分にとっては,とても衝撃を受けた一年となりました.当事者の方々にとっては現在進行形の問題であり,過去形で語って欲しくないと思っていることと思います.
2004年8月の「技術者・研究者としての自然に対する畏敬の念」でも書きましたが,これらの出来事では自然の尊大さと脅威を感じざるを得ません.テレビのニュース等で「なぜ防げなかったのか,なぜ予測できなかったのか」と問われると,現在の僕では返す言葉が無いというのが本音です.起こりえる事象を予測をして,それに対応した対策を限られた予算の中で行っている状況に対して,自然は時にその予測以上のことを起こしたりします.また,限られた予算の中では,起こりえる確率と起きた場合のインパクトを勘案して,対策をする順番も決めざるを得ません.ここにも予想外のことが生じたりします.このようなことを申し上げることは,工学教育を行っている僕としては,「自己否定」以外のなにものでもないのですから,この悔しさ,心苦しさを分かっていただけるでしょうか.
「まったく神様は,何てことをしてくれるのだ.」と言いたくもなります.年始早々から不謹慎かもしれませんが.でも本当にそう思いたくなることもあります.「自分の無力さを棚に上げ,何を言っているんだ」とお叱りを受けるかもしれません.でも,僕は「人間が無力だ」なんて,これっぽっちも思っていません.勝ち目のない神様からの試練に立ち向かっている人間が無力なはずがありません.“努力”という「力」を行使しているのですから.この家路の車窓を書いていて,“ポセイドン・アドベンチャー”という映画で,牧師役のジーン・ハックマンが死の直前に神に向かって言った言葉の意味が,ようやく理解できたように思います.
#すみません,最後は映画「ポセイドン・アドベンチャー」を観ていないと分からない終わり方になってしまいました.これを機会に「ポセイドン・アドベンチャー」(1972年のハリウッド映画.ロナルド・ニーム監督,大晦日の夜,海底地震による大津波で豪華客船ポセイドン号がまっさかさまに転覆.すぐには沈まない船から,生き残った人たちの脱出劇です.ジーン・ハックマンが牧師役,アーネスト・ボーグナインが分からず屋の警察官役,この二人の演技は見ごたえあります)をご覧になってはいかがでしょう.
2005/01/04火曜日
「やっぱり・・・初心忘るべからず・・・ですね」
テレビ鑑賞が大好きな僕は,やっぱりこのお正月は,いろいろテレビドラマを観てしまいました.日ごろ,子供たちと早く寝てしまうので,夜9時や10時に放映されている連続ドラマを観る機会が少ないのですが,年末年始は,高視聴率を得ていた連続ドラマの総集編が放映されることが多く,それを楽しみにしていました.今年は「ウォーターボーイズ2」が良かったですね.第一作目の「ウォーターボーイズ」もとても良かったです.まだ観ていないのですが,これらのテレビドラマの監督が「スウィングガールズ」(それにしても,ひねりのないタイトルだなぁ)という映画を作ったそうですが,2005/1/4の午前6:00〜7:00にフジテレビで,この映画の“スウィングガールズ”のFirst & Last Concertが放映されていました.女優さんたちが映画のために構成されたグループの割には,上手な演奏でした.
この「ウォーターボーイズ2」や“スウィングガールズ”の演奏を観ていて,「初心忘るべからず」という言葉が思い出されました.「ウォーターボーイズ」や「ウォーターボーイズ2」でのクライマックスは,学園祭での演技でした.何か非常にレベルの高い大会で優勝するとかいうのではなく,今までの自分たちよりもワンランクアップしたレベルへのステップアップというところが,とても良いように思います.また,対戦相手のいる勝負に勝つというのではなく,自分たちが理想として思い描いている演技や演奏が出来ることを勝利と位置づけている点も,一味違った良さがありますね.
これらのドラマを観てすがすがしい気分になれるのは,非常に素朴な「初心」(「ウォーターボーイズ2」では,高校時代に何か思い出を作りたいという素朴なものでしょう)を忘れずに,今までの自分よりもワンランク,ステップアップするために努力する姿に共感するからなのだと思います.
僕自身の近くにも,そのような学生の皆さんがたくさんいます.厳しい審査のある学術論文誌への論文掲載が決定した学生や国際会議で口頭発表する学生,学会で発表して優秀発表賞を獲得する学生もいます.もちろん,このようなレベルを目指して日ごろから努力している学生の皆さんは大勢います.ノーベル賞のような何か国際的な大賞を取るとかではなく,現在の自分よりもワンランクアップするための努力をしています.その姿を観ていると,「ウォーターボーイズ2」で得た共感と同じものを感じます.結果もそれなりに大切ですが,一番大切なのは,この「ワンランクアップするために努力すること」であり,その姿は美しいものだと思います.その意味で,「初心忘るべからず」という気持ちを,今回再認識いたしました.教員である僕の場合,教育や研究というレベルでは,学生の皆さんよりも高いレベルにあるのは事実だと思います.でもそんな僕であっても,現在の自分のレベルよりも上を目指して日ごろ努力している学生の皆さんを見習うべきだと思っています.僕も「現在の自分よりもワンランクアップするために努力すること」を今年の目標にしたいと思います.