家路の車窓
2005/03月号
2005/03/01火曜日
「教員のお手本は,映画“愛と青春の旅立ち”の鬼軍曹」
教員として歩みだして,もうすぐ4年がすぎ5年目を迎えます.「教育とは何ぞや」と良く考えるようになりました.完璧でもない自分が,教育者として出来ることは何か?教育者は完璧でなければならないのか?学生の皆さんを模範解答のある試験問題が良く解けるようにしてあげることが教育なのか?などなど.
教員といっても,小学校から大学・大学院までありますから,それぞれのステップで目標が異なるでしょうし,大学では学部によっても目標は異なるのでしょう.
僕の所属は工学部ですから,技術者を育てることが目標だと思います.これを考えていると,教員としてのお手本に,映画“愛と青春の旅立ち”の鬼軍曹が思い浮かびます.スクールウォーズの泣き虫先生(プロジェクトXでも取り上げられた伏見工業高校の先生)も,お手本にしてみたいと思いますが,やはり,先の映画の鬼軍曹がお手本ですね.
この鬼軍曹は,主人公であるリチャード・ギア(まだ若く,めちゃめちゃかっこいい)が士官学校に入学して出会う教員です.そこでは,鬼軍曹はリチャード・ギアに非常に厳しく接し,主人公の身体を極度の緊張状態にして「士官とは何ぞや」,「なぜ士官になりたいのか」と精神的にも厳しく問いかけていきます.鬼軍曹は,主人公の「士官になりたい」という意味を自問自答させ,重要で責任ある地位となる士官への主人公の認識を強化するために,肉体的にも精神的にも追い込んでいくわけです.このような厳しい教育を通じて「なんとなく士官になりたいなぁ」とか「偉くなれるから士官がいいなぁ」とか「給料が良いからやっぱり士官だよね」とか「士官はかっこいい」などという考えを,鬼軍曹は主人公の心から排除し,“士官という重要な地位と責任”を主人公の心に植えつけていくわけです.ここで先に述べてきた“士官”の部分を“技術者”に置き換えてみてください,これは技術者の教育に通じるものではないかと僕は考えています.
そして,主人公のリチャード・ギアが晴れて士官学校を卒業いたします.卒業するとリチャード・ギアは,士官学校の学生から“士官”という地位になります.そして,士官学校の教員である軍曹は,地位的には下士官.そう,地位が卒業と同時に逆転するのです.教員である軍曹が主人公の胸に士官のバッチをつけたと同時に,鬼軍曹が「おめでとうございます.士官殿」と最敬礼をするのです.そして士官となった主人公は,バッチをつける前までは自分の教員だった軍曹に対して「ありがとう,軍曹.君からはいろいろなことを教えられた.本当にありがとう.」と答えるのです.
大学における技術者教育もこれと同じだと思います.技術者として旅立っていく学生の皆さんは卒業と同時に技術者になるわけです.大学に残る教員よりも,本当の技術の現場に立ち向かうわけです.ですから僕も,「○○くん」(時々,呼び捨ての場合もありますが)とか呼んでいた人たちに対して,卒業証書を受け取った時点で「○○さん」と呼ぶようにしています.何かちょっと気恥ずかしい気持ちもあるのですが,技術者教育の精神のように思っています.でも,大学に残る教員の気持ちは嬉しさと寂しさが混在する複雑な心境です.映画“愛と青春の旅立ち”の鬼軍曹が士官学校卒業式のときにみせた複雑な表情と同じ気持ちです.
2005/03/01火曜日
「なんとなく元気になる素」
よく皆さんから,「あなたはいつも元気ですねぇ」と言われます.確かに元気ですね.でも実際は,コレステロール値も高く,体重もオーバー気味です.いや〜,健康管理に注意しなければと思っています.でも今回のお話の本題は,気持ちの部分における元気さです.その意味では,確かに僕は元気であると自分でも思います.十分睡眠も取っているし,朝は“パッ”と起きられるし,毎日気持ちの良い朝を迎えられています.いやいや,よく眠れるのは悩みが無いからではありませんよ.僕だって,自分の人生に対して,悩むことは大いにあります.悩みの無い人生なんてありませんよね,きっと.でも,寝るときは,何も考えないように“努力”して眠りに入ります.研究や教育のことをきれいさっぱり忘れて寝るように努めています.いろいろ考えながら寝るのは良くないと思います.いろいろ考えるのであれば,寝ずに起きて考えた方が意味があります.
元巨人軍監督の原さんが高校生の頃にお父さんから言われたことがあるそうです.スランプに陥りヒットが打てなくなったとき,よく眠れなかったそうです.そのとき,原さんのお父さんは「バッティングのことを考えて眠れないのだったら,起きて素振りをしなさい.そして身体を疲れさせ,何も考えずに床に入りなさい」と.
僕自身,転職する頃や教員人生を歩み始めた頃,古くは,学生から新社会人になった直後など,いろいろ悩みながら床について,朝起きるとドンヨリした疲れを感じたことがあります.そのとき,この原さんのお父さんのお話を思い出すようにしました.
何も考えず,悩んでいることを忘れて寝るというのは,思った以上に努力する必要がありますが,僕の場合,隣で一緒に寝ている息子と娘の顔を見ながら「かわいいなぁぁぁ」と思っていると何もかも忘れてしまいますね.これが僕の元気の素なんですね.それからもう一つ元気の素があります.学校に行くと,僕とお話してくれるたくさんの子供たち,学生の皆さんがいます.これも僕の元気の素になっています.