家路の車窓

2006/09月号

2006/09/15金曜日

 

「良い意味でのライバル心」

先日,前の所属機関の同期の友達と暑気払いをしました.かれこれ20年も前に知り合った連中ですが,今もって仲良くさせてもらっています.大学時代の友人とは違って,ただ単に気を許すだけの付き合いではなく,同じ職場でのライバルとしての付き合いもある友人です.でも私の場合は幸運にも,気の許せる部分の多い同期だったと思います.

この同期とは,大学院を卒業して就職した職場の寮ではじめて会いました.すぐ飲んで話しはじめて仲良くなりました.新人研修の帰りに立ち寄った飲み屋で大盛り上がりして,「このビール,なんか薄くね〜か?」という話になって,お店の店員さんに「ビールの栓を抜かないで持ってきて,俺たちの目の前で栓を抜いてくれ」と言ってみたり,学生気分がまだ抜けきらないものですから,東京の大学の学園祭をめぐって,合同コンパの相手を探したりということもしました.職場のビアパーティでは,新人が何か余興をするのが恒例なのですが,僕たちの同期は,それはそれはとても真剣に,少年隊の「君だけに」と司会(それは僕です)と4名分のスクールメイツ(同期の女性職員は2名でした)の練習を仕事以上に行っていました.このときの司会役がきっかけなのか,同期たちの結婚式の司会も良く頼まれてやりました.いろんなケースがありましたね.失敗を良くする司会だったのですが,同期の友達はそれを許してくれて,僕に頼んでくれました.

しかし仕事の面では,みんな研究者ですから博士の学位を取得するというのは,お互い一つの目標なんですね.みんなで学位取得について,飲み会などで話しましたね.「オレ今,指導教員と相談させてもらっている」とか「そのために,学術論文を書いているんだ」とか.それを聞いてよい意味でのライバル心を持って「オレも頑張らなきゃ」と思ったりしました.

先日の飲み会には,縁あって,自分の教え子が同席しました.同期のみんなは,はじめて会ったのに,いろいろ話しかけてくれました.教員になるために僕は退職してしまったのだけれど,「お前の教え子か」ということで,本当に快く受け入れてくれました.良きライバルに恵まれたと感謝したいと思います.

 

2006/09/15金曜日

「阪神・藤川投手vs日本ハム・小笠原選手」

今年のプロ野球オールスター戦でもっとも印象に残ったシーンは,第一試合での9回裏1アウトとなったときに来ました.阪神の藤川投手とバッター・日本ハムの小笠原選手の対決です.二人とも野球世界一決定戦となったWBCに出場した日本代表選手です.

阪神の藤川投手は,球界を代表する剛速球投手で,僕の息子が憧れているピッチャーです.一方,日ハムの小笠原選手は,鋭い目つきでピッチャーを睨み,“ガッツ”というニックネームどおりにフルスイングが身上の強打者です.この二人の対決が,第一試合の9回裏1アウトのときに廻ってきました.藤川投手は直球しか投げませんでした.しかも,きわどいコースを狙うのではなく,ど真ん中に自慢の剛速球を投げ込んでいました.小笠原選手も,コツンと当てていこうなどとは考えずに,すべてフルスイングでした.マウンドに立つ藤川投手とバッターボックスに立つ小笠原選手が対峙している時の二人の顔は,普段のペナントレースでの試合では,絶対に見られないような,とても楽しそうに,ものすごく輝いていました.二人とも興奮のせいか,もの凄く汗をかいていましたが,輝くような笑顔さえ見せながら対峙していました.しかし,スローモーションで映し出される,まさに二人が対決しているシーンは全く違っていました.藤川投手の投げるシーンが映し出されると,必死の形相でボールを投げていることが分かりました.同じように,小笠原選手も食らい付くように,バットをボールに当てていました.ボールを投げる瞬間,そしてバットを振る瞬間は,もの凄い形相で,まさに“必死”という感じでした.でも,そんなに暑くもない夜であったのに,もの凄い量の汗を輝かせながらマウンドに立ち,セットポジションで構える藤川投手は“この対決が楽しくてたまらない”という表情で,投球モーションに入る前には,何度も大きく深呼吸していました.楽しくて楽しくて興奮していたのでしょうね.小笠原選手も,投げ込まれる剛速球にフルスイングしたあとはホームベースを跨いで仁王立ちになり不敵な笑みを浮かべて,同じように興奮していたのだと思います.まさに“真剣勝負”でした.

最後は,藤川投手のど真ん中の剛速球に,小笠原選手がフルスイングして三振となり決着は付きました.ほんの10分足らずの勝負でしたが,テレビで見ていてとても興奮しました.藤川投手は,三振を取った瞬間,ガッツポーズは取りませんでした.真っ向勝負に対峙してくれた小笠原投手に敬意を表し,「ありがとうございました.」という気持ちだったのでしょう,帽子をとって頭を深々とさげていました.僕は,この対決が終わりバッターボックスからベンチに戻る小笠原選手とピッチャー交代のためマウンドを降りる藤川投手に,テレビの前でスタンディング・オベーションをしていました.

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