家路の車窓

2006/12月号

2006/12/1金曜日

 

「“不安な気持ち”と共存しよう」

人間というのは,“不安”な気持ちを必ず持つものですね.不安にもいろいろな種類があります.大学に入って友達ができるかなぁと思う“不安”,就職先や進学先でどのような出来事に出会うか全く分からないからこそ持ってしまう“不安”,自分は本当にやっていけるのだろうかと思ってしまう“不安”,たくさん仕事を抱え込んでしまってちゃんとこなせるかどうかと思う“不安”,1点差で迎えた9回裏ツーアウト満塁の時に打席がまわってきてバッターボックスに入るときの“不安”,結婚してうまくやっていけるかと思う“不安”,子供を持つといろいろなことを勝手に想像してしまい持ってしまう“不安”,そしてこれからの未だ見ぬ将来への“不安”などなど.皆さんもきっと,自分の置かれた状況において,常に不安な気持ちを持っているものと思います.そんなこと,お前に言われなくても分かっているという声が聞こえてきそうですが.僕もそれなりに,不安な気持ちを持っています.でも今は,その“不安な気持ち”とうまく共存しているというのでしょうか,ある意味,楽しんでもいるかもしれません.

働き始めたときは,僕も一人前のプロになりたいと思いました.でも,どうやったら一人前になれるのか皆目分からず,将来に対してとても,とても,と〜っても“不安”な気持ちでいました.ただ,その不安を取り除くことができればという思いで,その時に自分のできることを精一杯やってきたと思います.ただ,それなりに一生懸命,何かをやっていたら,いつの間にか自分に自信が持てるようになり,不安な気持ちはなくなりはしませんが,緩和されたという感じです.結局のところ,その“不安”なものに対して根本的な解決など全くしていないし,依然として不安な気持ちがあるのですが,「何とかなるかなぁ」という気持ちが芽生えてくるのです.今では,「あ〜,あの頃は不安で不安で仕方なかったなぁ」と懐かしむことまで出来て,不安をたくさん持つということは,むしろ,いい思い出をたくさん持つことになるとも思っています.

不安を持つと,人はそれを乗り越えようとしたり,逃れようとしたりします.しかし僕の場合,がむしゃらに乗り越えようとはせず,だけどその不安から逃げようともしません.僕の指導教員の奥様から,大学院2年生のときに心に残ることを伺いました.「人は必ず壁に出会います.でもね,その壁をただ乗り越えることだけを考えてはダメですよ.また逃げてもいけません.壁に出会ったら,まったく関係が無いことも考えてみると良いですよ.別な形で乗り越えるヒントが浮かんできたりします.そのような意味で,ただ学問だけをするのではなく,いろいろな分野の本を読み,音楽を聴き,映画を観たりしていろいろな人の心を感じ,紀行を読んだり,実際に旅行して各地の気候風土を身に感じて,あなたの心を豊かにしてください.すると,いろいろな形で壁を乗り越えるヒントがきっと見つかりますから」と言われました.

僕もそれなりに“不安な気持ち”を持ちつつやってきましたし,今もそうですし,これからもそうだと思います.この“不安な気持ち”とうまく付き合いながら,これからも“楽しく”やっていこうと思います.

 

2006/12/1金曜日

「妹」

よく似ている(見た目も性格も)といわれる息子と僕の違いは,僕は次男で「兄」を持っているのに対し,息子は長男で「妹」を持っている点です.以前,吉田拓郎とかぐや姫が“つまこい”で31年ぶりの同窓会コンサートを行ったというテレビ番組で,かぐや姫が名曲「妹」を歌ったのを妻が見て,自分の息子とダブらせて聴いたようで「息子に聴かせたい」と言ってきました.ということで,レンタルCDショップで,“懐かしの昭和名曲集”っていう感じ(正確なタイトルは忘れちゃいました)のタイトルのCDを借りてきました.そのCDにはかぐや姫の「神田川」,「赤ちょうちん」,「なごり雪」(イルカの“なごり雪”が有名ですが,この曲はかぐや姫のメンバー・伊勢正三の作品です),「好きだった人」,「うちのお父さん」など,風の「22才の別れ」,「ささやかなこの人生」(カラオケで歌っちゃう)など,山田パンダの「風の街」(“あこがれ共同体”(不正確)とかいった,当時の御三家と呼ばれた郷ひろみ,西城秀樹,野口五郎が主演したテレビドラマの主題曲.番組内容はつまらなかったが,この曲が聴きたくてチャンネルを合わせていた),「落陽」(これは吉田拓郎の作です)など,イルカの「いつか冷たい雨が」,「海岸通り」,「なごり雪」(名曲!)が入っていました.もちろん,「妹」も入っていました.

早速,息子に「妹」を聴かせてみました.妹も一緒にです.息子はしばらくするとなんとなく聴きたくないという素振りでした.顔を見ると,なんとなく涙ぐんでいました.娘は曲を聴きながら“あれっ?この子のお父さん,お母さん,死んじゃったんだ,かわいそうだね”とのん気な感じでした.名曲「妹」は,翌日友人のところに嫁ぐ妹を思う兄の優しい心を歌ったものです.まだ小学4年生ですし,妹は保育園の年長さんですが,妹を思う心は育まれているのかもしれませんね.息子は「妹はうるさくて嫌いだ.いらない」とか言っていながら,野球部の友達と公園で遊ぶときにも,妹が「一緒に行きたい」というと,連れて行って一緒に遊んでいるようです.野球部の仲間も妹が一緒じゃないと「あれっ,今日は妹は?」と尋ねたりしてきます.

何回か息子に「妹」を聴かせていると,イルカの「なごり雪」の方が良いと言い出して,途中から曲を変更してしまいます.「妹」は,やはりなんとなく自分とダブらせてしまうので嫌なのかもしれませんね.僕は「妹」を持っていませんので,息子の心情にはなれませんが,なんとなく想像できるような気がします.兄と妹という関係は,兄と弟(僕の場合はこれになります),姉と妹(妻がこれに当たります)の関係とは違う何か特別な心情を持っているのかもしません.

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