家路の車窓
2007/09月号
2007/09/04火曜日
「優勝(グラウンド編)」
皆さん,何度かこの家路の車窓でも紹介してきましたが,我が長男が所属する野球チームが,市の大会において念願の念願の優勝を果たしました.やったー!本当に嬉しく思います.今回は所属選手の親として,コーチのお手伝いとして,土日の練習や大会までの合宿にも同行しましたので,その喜びは格別のものになりました.3月の頃は,練習試合でもなかなか勝つことができず,その試合内容もジタバタもがいているようなプレーが目立ち,まさに“自滅”でした.市の大会の前に参加した,隣市の市長杯争奪野球大会でも,逆転サヨナラ負けをしてしまい,落ち込むばかりでした.そんなチームが優勝したのです.
一回戦はくじシードで,我が長男の所属するチームは2回戦からの登場です.対戦相手は,いくつかの子供会の連合チームで,練習試合でもあまり対戦がないので,どんな戦力なのか不明で不気味な存在です.しかし,そこは落ち着いて戦い,コールド勝ちをおさめ,翌日の準決勝に臨むことになりました.準決勝の相手は宿敵・ライバルチームでした.このチームは別の子ども会のチームなのですが,実は同じ小学校に通う児童で構成されていて,お互い選手同士の性格から身体能力まで分かり合ったチームです.したがって,とてもやりにくい相手ではあるのですが,お互いに“絶対に負けたくない”相手チームなのです.その試合内容は,1点を争う試合で胃が痛くなるほどの緊迫した試合内容でした.こちらが1点リードすると相手もすぐ次の回に同点にしてくるという内容です.野球の試合としてはとっても面白い内容の試合でしたが,応援席で見ている親たちにとっては精神的に消耗する試合でした.
相手の投手は,もちろん小学生なのですが,“ずどん”と伸びのあるボールを投げる選手でした.前日の試合では制球に苦しむ場面があったのですが,ライバルである我がチームとの対戦では“絶対に負けない”という意気込みできていて,とてもよくコントロールされて伸びのあるボールを次々と投げ込んできます.これはなかなか点が取れないかなと思っていたのですが,微妙なタイミングでセーフとなったランナーが,足でかき回して,こつこつと1点ずつ積み重ね,最終の7回を通じて5点を取りました.しかし相手もこつこつと得点を重ね,7回裏までに4点を獲得し,さらにツーアウト2, 3塁にまでなってしまいました.一打逆転サヨナラのピンチに追い込まれました.もうドキドキして,本当に手を合わせて祈る気持ちでいました.そして,最後のバッターが放った強い打球がショートの前にいき,“ミスをしないでくれ”という気持ちでファーストへのボールを見守りました.バッターランナーは,ヘッドスライディングで飛び込み,2, 3塁のランナーはもちろん,ホームに飛び込んできます.1塁塁審が「アウト!」と宣告した瞬間,グラウンドの選手もベンチの選手も飛び上がって喜んでいました.あの負け癖の付きかかったチームが,この緊迫した状況の中で1点差を守りきる強い精神力を持つチームに成長した瞬間でした.
そして次に臨むのは決勝戦です.相手チームは準決勝で17-1のコールド勝ちをしてきた強いチームでしたが,あの緊迫した準決勝を征した勢いから,我が長男の所属するチームは,初回から大量得点を重ね,コールドと時間制限のない決勝ですので,20-2の大差で優勝を果たしました.今まで,幾度と無く,相手チームにいいように走られたりしたのですが,この試合では,四球で出たランナーがどんどん走り,重盗からスクイズなど,徹底して点を取りにいきました.幾度と無く,つらい逆転負けを経験しているチームですから,どんなに得点を重ねても,気を抜いたら負けてしまうという思いがあったのでしょう.どの選手も,貪欲に勝利に向かっている顔をしていました.いつも練習ではボールをぽろぽろ落とすキャッチャーが,吸い込まれるようにミットでボールを捕らえ,いつもは暑さからボーっとしがちなレフトが,強い風で流れるボールに集中ししっかりと捕球し,いつもボールに追いつけないファーストが,一塁ファールグラウンドに上がったボールを必死に捕らえ,審判に「取った!」とアピールし,いつこんなに上手になったのかと思うプレーの連続でした.
優勝した瞬間,みんなは笑顔でしたが,すぐに泣き出しました.今までの悔し涙ではなく,心のそこからの嬉し涙でした.その顔につられ,監督もコーチも,親たちも,みんなで嬉しい嬉しい涙を流しました.本当に,みんなおめでとう!
2007/09/04火曜日
「優勝(ベンチ編)」
先に,我が長男の所属する野球チームが市の大会で優勝したことをお知らせしました.そのときにはもっぱらグラウンドでプレーする選手の様子をお伝えしましたが,実際には,これらの選手以外にも大活躍した選手がいたのです.そう,ベンチで大きな声を出してプレーをしている選手に指示を出したり応援したり,打者が投げたバットをすばやく引いたりする選手も,とても重要なプレーをしてくれました.
以前から我がチームで気になっていたことは,ベンチの選手が大きな声で応援もしなければ,グラウンドに出ていないんだから僕は関係ないという雰囲気がありました.気づいたら野球の試合そっちのけで,おしゃべりばかりしたり.やっと声を出して応援できたかと思うと,ピンチになると黙ってしまって,プレーしている選手どころかベンチの選手まで緊張してしまう始末でした.しかし,この大会では,ベンチの選手もまた,大きく成長しました.
話は少し変わりますが,僕は野球経験がないので,コーチのお手伝いとしてできることは,ボール拾いや球出し,低学年の子達とキャッチボールをしてあげることぐらいです.低学年の子達と混じって高学年の子で,まだボールを怖がる子達とも一緒にキャッチボールをします.その中に,身体は大きく,トスバッティングでは,もの凄い勢いで打球を飛ばす高学年の子がいます.しかし,補球が苦手で守備がうまくできません.野球は守りが重要ですから,守備が苦手ではなかなか実践的なプレーを学ぶ段階にいけません.この子とキャッチボールをしながら話していると,「後から入団した子に抜かされることが悔しい」とポロッともらしたことがあります.この子は,運動会で父兄参加の綱引きに僕がいそいそと出場しようとしていると,「小峯コーチ,頑張ってください」と笑顔で声をかけてくれるような明るく,気の優しい子です.うちの長男とも同級で,大喧嘩もしたりしますが,よく遊んでくれています.僕のことを運動会で応援してくれるような子なのですから,野球のコーチとして,なんとかこの子を応援してやれないかといつも思っていました.
あるとき,この子の大好きなトスバッティングを終えた後,大きな声を出して友達を応援する姿を見ました.外から見ていた僕自身が勇気づけられるような声でした.トスバッティング後,監督から一軍の守備に入れと命じられ,未だ打球が怖くうまく補球できないけれども,声を出し続け自分を勇気づけて涙も見せず捕球を試みるこの子がいました.監督が10球以上打っても,うまく捕球ができません.でも,声を出し続けて捕球を試みます.自然とチームメート全員が「頑張れ!絶対に取れる」と応援する声が出てきます.その練習をコーチとして見ていて感動してしまいました.
その子は,市の大会では,やはりグラウンドに出ることはできませんでした.しかし,間違いなく野球選手です.市の大会の初戦に臨む際に僕はその子に近寄って,「ベンチでの応援と走塁コーチをしっかり頼む.勝敗は,お前のコーチや応援での声の大きさにかかっているよ」と言いました.普段はかわいい声をしているのですが,今回の大会での声はまさに,闘将の声でした.素晴らしい.その応援の声に引っ張られ,ベンチの応援の声は,途切れることなく,また,コーチとしての声は,各選手に届いていました.いえいえ,決勝戦で2塁塁審をした方から,「ファーストコーチの子は,とても良い声で指示を出していましたね,びっくりしました」と言われました.
このときのベンチの声で,グラウンドでプレーしている選手も勇気づけられたと思うし,まさに全員で勝ち取った優勝と思います.祝勝会のときに,この子と話していて「準決勝の宿敵チームに勝った時,うれしくて涙が少し出たんだ.だけど優勝に取って置かなきゃ,って思ったんだ.だから優勝したとき,嬉しくて涙が止まらなかったんだ」と聞いたとき,間違いなくこの子もプレーしていたと確信しました.そして,この子と我が長男が優勝メダルを見つめながら「夢じゃないんだよね」と話しているのを見て,そんなにまで優勝を目指していたのかと思いました.まだ,この子たちにも来年の大会があります.もっと大きく成長することを願った祝勝会でした.
最高の笑顔!(左下は応援に来てくれたテレビ東京「ポチたま」のエルフ,9月28日に放映されました)