家路の車窓
2009/08月号
2009/08/04火曜日
「“イマジネーション力の低下”と“言われたことだけをやる”の関係についての考察〜では,どうすれば良いか〜」
今回は,ちょっと難くなるというか・・・あること対して考察したことをお話します.あるテレビで,料理人の修行をテーマにした番組をやっていました.親方が,「最近の若い人は,言われたことしかやらないから,昔だったら一人前になるのに10年と言われていたが,今は15年くらいかかる」とコメントしていました.その番組中で,修行中の若者が親方に言われて,料理道具を持ってきたのですが,それに付随する用具を忘れてしまったシーンを受けてのコメントでした.親方が一体何をこれから行おうとしているかをイメージしなかったことから,付随する用具については特に指示されていなかったので,持ってこなかったのでしょうね.
皆さんの中には「その付随する道具を持ってこいと言われなかったから,持ってこなかった」という言い分も通るように思う人もいらっしゃるかもしれません.しかし親方からすれば,「持ってこいと指示した用具を考えて,これから俺が何をやるかをイメージすれば,それに付随する道具を持ってくるのは当たり前だ」という論理です.しかし,若い人は「言ってくれなければ分からない」と反論してくるかもしれませんね.
でも,この反論について少し考えてみましょう.例えば,小さい子が家の中のストーブの近くでマッチを擦って遊んでいたら,皆さんはどうしますか.その子に「火事になるから,やめなさい」と言いますよね.小さい子は,マッチの火から火事が発生するというイメージができないかもしれませんね.しかし高校生にもなって,もし,同じようなことしていたら,「何やっているんだ.火事になるだろう.それくらい分からないのか?」と言われると思います.最後のフレーズ「それくらい分からないのか?」は「それくらいイメージできないのか?」と同じ文意ですね.もし,この高校生が,「いや,火事になると言ってくれなければ,分からないよ」と発言したら,皆さん,どう思いますか.
先の親方の発言は,その若者をある程度のレベルまで成長している人材と認めて,それでもなお,そのイマジネーション力の成長が芳しくないことから,厳しく指導したものと思います.このように考えると,「言ってくれなければ,分からない」とか「言ってくれなかったら,やらなかった」というのは,ちょっと恥ずかしいと思いませんか.自分が成長していないことを,自分で認めてしまっていることになりませんかね.
でも,イマジネーション力の低下は,改善することが出来ます.巷では「イマジネーション力の欠如」と言ったりしていますが,僕の近くにいる若い人たちを見ていると,とてもイマジネーション力の高い人たちばかりですので,“欠如”ということはないと思います.あくまで大学の受験勉強に力を注いでいる頃とかに,イマジネーション力は低下しているのであって,決して欠如しているのではないと思います.大学に入ってきた学生の皆さんのイマジネーション力を向上させるような教育を提供するのが,我々大学教員の使命であると思います.
2009/08/04火曜日
「高倉健が演じる“新幹線大爆破”の犯人」
久しぶりに映画鑑賞の感想文を書こうと思います.昭和50年代に製作された東映映画「新幹線大爆破」をご存知の方は,いらっしゃいますか.当時は,結構話題になったのですが,僕と同年代でこの映画を知っているという人は,小さい頃から映画好きだったのでしょう.つい先日,お店でこの「新幹線大爆破」のDVDを見つけ,懐かしく思っていたら,気付いたら購入していました.いわゆる衝動買いですね.この映画のキャスティングは素晴らしく,国鉄総裁に志村喬(黒澤明の“七人の侍”のリーダー侍の人です),新幹線の司令官に宇津井健(う〜ん,山口百恵主演のTVドラマ“赤いシリーズ”では,百恵ちゃんのお父さん役で出演していたかな),新幹線運転手には千葉真一(関根勤が真似する,あの千葉ちゃんです.野際陽子の元旦那さん),主犯は高倉健(日本を代表するハードガイですね)といった感じで,その他ちょっとした役に,あの大物俳優・女優が!と思うような配役でした.当時の日本の映画では,これ以上ないという素晴らしい配役でした.
内容は詳しくお話しませんが,ある新幹線に爆弾が仕掛けられ,新幹線の速度が時速80km以下になると爆発するという代物です.犯人からの交渉とそれに対する新幹線司令官と警察の戦いを描いています.なんとか金を取りたい犯人,乗客の命を第一に考える国鉄マン,犯人逮捕に画策する警察と,それぞれの立場で優先するものが異なることから,さまざまな駆け引きが描かれたり,なぜ犯人がこのような犯行を行うに至るのかというところまで丁寧に描写しています.かつての日本映画は,このように丁寧なサスペンスかつヒューマンドラマが描けたはずなんだけど.いつから,いまのような日本映画事情になってしまったのやら.是非一度,この「新幹線大爆破」,ご覧いただければと思います.
左が,この映画の舞台となる0系新幹線です.左の写真は,鉄道博物館にあるレプリカです.