家路の車窓

2009/11月号

2009/11/02月曜日

 

「エジプト・アレキサンドリアのタクシー」

現在,エジプトのアレキサンドリアという都市で開催されている国際会議に出席しております.たった今,晩餐会からホテルに戻ってきたところです.海外の研究者・技術者との親交を深める場である晩餐会の会場と宿泊しているホテルがかなり離れていたので,会議の実行委員会では,送迎用のバスを用意してくれていました.まぁ,毎回,そのような丁寧な配慮があるのですが,文化の違いというか,困った問題があります.晩餐会が長いんですねぇ,特に日本人にとっては.なかなか食事は出てこないし,つまみも無く,だらだらと飲み続ける感じですかねぇ.やっとお皿が出てきても,お世辞にもおいしいとは言えないし.夜も更けて深夜0時にもなりそうなのに,一向に終わる気配は無く,踊りだす人もいる状態です.しかし,送迎バスで送られてきた僕たちは,帰るすべも無く・・・・送迎バスは,晩餐会が終わらないと出発しないので,途中退場ができないのです.

仕方が無いということで,同じホテルの人たちと意を決して,タクシーで帰ることになりました.ところが,これが,いやはや,ドキドキ体験でした.もう二度とエジプトのタクシーには乗りたくないです.一般道なのに,時速100 km以上は出しているのではないでしょうか.タクシーもお客さん3名で満車になるような小さな車輌,しかも古いにもかかわらずです.日ごろ仲良くしてもらっている大学の先生曰く「チキチキマシン猛レース」(僕が小学生の頃,夏休みになると必ず放映していたTVマンガです.ブラック魔王とケンケンという犬が登場し,オリジナルの車で,はちゃめちゃな競争をするマンガです.)状態です.幅寄せ,煽り,すり抜けは当たり前です.ブレーキは常に,急ブレーキです.

ところでなぜ,ドキドキ体験かというと,たった今乗ってきたタクシーの目の前で,追突事故が起こってしまったからです.僕たちの乗っていたタクシー(時速100kmぐらい出してたんじゃないかなぁ)を追い抜いていった自動車が,僕たちの目の前,2台ぐらい前のところで,追突事故を起こしたのです.原因は「歩行者」なのです.日本で考えれば,あんな乱暴で暴走に近い自動車の方が悪いと思うのですが,どうもエジプトではそうではないようです.

実は,ホテルから国際会議の会場までは,徒歩で20分ぐらいなので,歩いて通っていました.いくつか通りを渡らなければならないのですが,これが物凄く怖いのです.どう考えても,歩行者を轢くつもりで運転しているとしか思えないのです.タクシーに限らず,すべての自動車がそうなのです.通りを渡っていると,あたかもミサイルにロックオンされたかのように,僕を目指して自動車が疾走してくる感じがします.僕は,ベトナムやインドなどの交通状況も経験しましたが,今回のエジプトが最も「恐怖」を感じました.

そんな状況ですから,タクシーに乗車するのにも,覚悟が入ります.先の事故は,道路を横断していたカップルを避けようとして,ハンドル操作を誤った事故でした.こう書くと,確かにカップルが悪いように思われるかもしれませんが,歩行者が道路を渡るための信号や横断歩道が,まったくといってよいほど,ありません.では,どうやって,向こうの通りに渡ればよいのか.歩行者のことは,まったく考えていない国なのかもしれませんが,先の事故後に,原因となったカップルの歩行者に文句を叫んでいた,我がタクシーの親父運転手に「おいおい,暴走している運転手の方が悪いだろう!」と日本語で文句を言う私たちでした.あ〜,怖かったぁ.

 この写真をクリック!

左:エジプト・アレキサンドリアのタクシー,これで速く走れるのかと思うのだが,ものすごく速い.右:アレキサンドリアの地中海に面した道路を渡る人,この写真をクリックすると,おじさんの“曲芸”ともいうべき道路を渡る技が見られます.

 

2009/11/02月曜日

 

「海外の食事を通じて考える日本人の食卓:日本人は,いかに食事を楽しんでいるか」

日本の一般的な家庭では,「今晩のおかずは何にする?」という問いかけが,ほぼ毎日お母さんから家族に投げかけられます.「うん?何でもいいよ.」というと,「そういう答えが一番困るのよねぇ」という会話は,毎日どこかの家庭で行われていることでしょう.

しかし,このような会話は,ある意味,食事を楽しんでいる証拠なのかもしれません.今回のエジプトへの海外出張を含め,数多くの海外出張の際に,食事をしなければならないわけですが,ほとんど選択肢が限られていることが分かります.肉か魚か,どちらか選ぶだけの食事なのです.料理方法も,いくつかに限定されているので,食材と方法の組み合わせを考えても,日本の食卓のバリエーションの比ではありませんね,きっと.したがって,海外のほとんどの国では,日本のような無限に近い種類の食事の選択肢が考えられる「今晩何にする?」という家族の会話は無いと思います.「今日はどっちにする?肉,それとも魚?」という会話だけなのでしょうね.

こうやって考えてみると,日本人は,食事の内容を楽しむのでしょう.だから,黙々と食べることに専念する.一方,海外では,食事の内容を楽しむバリエーションが少ない分,食事をしているシチュエーションを楽しんでいるのかもしれません.だから,会話が多く,踊ったり,歌ったりで,食事に要する時間も長くなるのかもしれませんね.いや〜,あの料理を黙々と食べていたら,飽きてしまうし,愚痴ばっかりが出てくることでしょう.まさに今回のエジプト国際会議での晩餐会が,そんな感じになってしまって,出てくる料理を食べながら「いや〜,これマズイよね」という会話だけで,お友達と盛り上がってしまいました.

  

エジプトで食べた食事の数々.左:前菜ですが,これがメインディッシュと思ってガツガツ食べたら,本当のメインディッシュの肉が出てきて・・・,中央:晩餐会で出てきた肉料理,本当にマズかった.右:モロヘイヤのスープ,唯一,おいしいと思った料理です.

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