家路の車窓
2012/7月号
2012/07/02月曜日
「歴史を学ぼう!」
最近の講義で,このことをよく話しているような気がします.もちろん,僕は工学部の教員ですから,歴史そのものを教えてはいませんし,その必要もありません.今むしろ,構造物を設計する上での数学的・物理学的解釈を教えなければなりませんから,「歴史を学ぼう!」などと言っていてはいけないのかもしれません.しかし,そう言いたくなってしまうのです.
構造物の設計のお話をしていても,いつ,どこで,だれが,何のために,そのような設計法を編み出す必要があったのかという話をする必要があります.マニュアルに書いてあることだけ教えていても,極めて公式的になるし,その本質を教えようと思うと,上記のような時代背景や必要性を話す必要があります.そして,このような本質に関するお話は,とてもロマンチックで鳥肌が立つような感動があります.設計で使われる数々の式を公式として覚えたら,何の味気もないものになってしまいます.しかし,それらの式の数々が,時代と社会が求めていたかのように,生まれ出でていく状況を知ると,本当に鳥肌が立つぐらいワクワクします.神様っているのかも,と思うぐらいです.
講義の際には,このようなロマンも感じてもらいたいと思って,その設計法の歴史について話し始めます.その際に,多くの人が知っているであろう歴史上の人物の名前が出てきます.僕の講義では,ナポレオン,加藤清正,武田信玄,クーロン,ライプニッツ,ニュートン,ダーウィンという名前が出てきます.しかし,最近は,こういう名前を出しても,「ポカン・・・」としている感じの人が多いのです.
どうも,高校で歴史を学んでいないとのことです.理系コースのカリキュラムでは,歴史をあまり取らないそうなのです.うーん,困った!ロマンが伝えられない.ということで,「歴史を学ぼう!」ということになります.あんまり早くから「文系・理系」などと分けないでほしいですね.歴史は,「どんなに偉い人でも,数多くの失敗をした.だから,失敗を恐れず,どんどん挑戦しよう!」ということを学ぶことにもなるのですから,今の日本の若者は絶対に学ぶ必要がありますよね.もちろん,受験勉強的に,語呂合わせで年号を覚えるようなものではなく,多くの歴史的イベントが,どのような社会的な背景や必要性の下,運命のいたずらのように出現した英雄がなし得たか,そして,どのような失敗を乗り越え,成し遂げたかを学んで欲しいと思います.
2012/07/02月曜日
「台風一過」
この時期にしては,台風がよく来ますね.幼少の頃の台風の思い出というと,雨戸を締め切った自宅の一室にみんなで集まっていたことを思い出します.あれはたぶん,幼稚園生だった頃と思います.その一室で,赤い全体色に白い紆余曲折したような白線の時代の丸ノ内線地下鉄の模型で遊んでいたことが,なぜか鮮明に思い出されますが,当時は,台風は恐いものであると認識でした.実際,台風が来ると,何名かの方々の命が失われたように記憶しています.
しかし,今はどうでしょうか.もちろん,大きな台風の場合,尊い生命が失われることはありますが,多くの人の台風に対する恐怖心は,40年も前の頃と比べて,小さくなっていないでしょうか.僕は,そんな気がします.おそらく,土木技術と公共工事による堤防や社会基盤施設の強度増加によって,実際に,台風に耐えられる力が付いたのでしょうね.しかし,政治家や一般の国民,マスメディアの多くは,それに気づいているでしょうか.台風が来たら,そんなことにも思いを巡らして,もう少し,土木工学の社会的貢献を認めてもらいたいと思います.
2012年6月20日早朝の空.前日2012年6月19日の深夜に,台風4号が通過しました.