家路の車窓
2012/9月号
2012/09/03月曜日
「日本人気質に関する一考察〜『昭和16年夏の敗戦』の感想から〜」
最近の日本の状況を見ていて,第二次世界大戦・日米開戦に突入していった“雰囲気”と似ているのかなと思っています.と言っても,日米開戦の頃のことを,正確に,僕が理解しているかどうかは不安なところがあります.当時,この世に存在していませんでしたから.高校生の頃に習った日本史でも,あまり,この頃の内容に触れられませんでした.「どうしてなのかな?」と思っていましたが,50歳にもなると,何となく分かるような気がします.
『戦争はけしからん』・・・まったくもって同感です.絶対に戦争はいけません.では,どうして戦争が始まったのか.高校生の頃から,そんなふうに考える人間だったようです.常に「では,どうしてそうなるのか」と考える高校生だったようで,今も,それは変わりません.僕が高校生の頃は,テレビや新聞等では,必ず「一部の人の責任」というように報道していたように思います.2012年現在は,そもそも,戦争や開戦当時の話題すら,少なくなっていますが,僕が高校生の頃は,今よりは話題になっていました.一部の人たちによって,軍国主義に誘導されたと主張する人たちがいました.いや,今もいるでしょう.確かに一部の人がきっかけを作ったかもしれませんが,それだけで,日本全体が動くものでしょうか.
僕はあまり,人の意見に左右されるところがないのか,空気が読めないのか,自分の考えを基本に行動しているところがあります(正直,実際のところは分かっていませんが).だから,「どうして一部の人の考えに,すべての日本人が誘導されたのか」ということを,高校生の頃から考えていました.だって,一部の人が「やろう」と言っても,90%の人が「やめよう」と主張すれば,一部の人の意見ではなく,90%の人の意見の方が支持されると思うじゃないですか.本当に,第二次世界大戦は,一部の人が始めたことなのか?こんなことを,ずっと考えていました.
さて,今回の家路の車窓タイトルにある『昭和16年夏の敗戦』は,国会中継を見ていたときに,ある政治家が口にした本のタイトルです.この本のタイトルを耳にしたとき,読んでみたいと思って,本屋に行きましたが,なかなか見つけられず,ついにはネットで購入しました.高校生の頃には,考えられない方法で購入しましたね.この本は,開戦当時の人たちのインタビューをベースに執筆されているようですから,少しは当時のことも分かるかなと思って,読み進めました.この本の解釈では,日米開戦の機運は,世論の方にあったようです.多くの世論は,なぜ開戦をしないのかという雰囲気を持っていたそうです.戦争を始めたと言われている人たちは,なんとか戦争を回避できないかと奔走したようです.世論も含め,当時の日本の“雰囲気”に押し切られ,開戦を決断させられたという状況だったようです.戦争を始めたと言われている第一の人は,開戦を決める日の朝,戦争回避ができず,一人慟哭していたそうです.この本の解釈からすれば,やはり「一部の人の責任」ではなく,大多数の日本人が醸し出す“雰囲気”が,戦争に導いたのではないかとなります.
さてさて,日本人には,そもそも,このような気質があるのではないでしょうかね.自分の主張をあまり持たない,もしくは主張をしない日本人の気質には,大勢に流されるという気質があると思います.一部の人の意見を聞いているうちに,「そうかもなぁ」と思っているうちに,ほぼ100%の人が,その意見と同じになってしまうということがあると思います.最初に自分の意見を持たないと,こうなるでしょうね.よく考えてみると,ちょっと恐ろしいことですね.そのためには,正しい知識を習得し,自分自身の意見・判断を持たないといけません.これはとても重要なことです.このような正確な知識に基づく各自の判断を持たずにいると,大勢に流されてしまうのでしょう,それが破滅の道に進むものであっても.戦後の大学生が夢中になったことや僕が大学生の頃にあった一部の宗教グループ内での出来事も同じことではないでしょうか.つまり,きっかけを作った一部の人にも責任はあるのでしょうが,結局は,それを支持した大多数の世論が,実際の行動になっているというものと思います.誰かの責任ではなく,一人一人,自分の責任なのでしょうね.
さてさてさて,最近の日本を見ていると,なんとなく,日米開戦の頃に似ているようにも感じます.正確な知識に基づいて各自判断できているでしょうか.なんとなく,大多数の世論に流されていませんか.